辨 |
花は白色、径4cm。 |
リンゴ属 Malus(蘋果 píngguŏ 屬)の植物については、リンゴ属を見よ。 |
訓 |
和名のカイドウは漢語海棠の音、ホンカイドウとは本物のカイドウ。 |
説 |
漢土原産、河北・陝西・山東・江蘇・浙江・雲南などで栽培され続けてきた観賞用品であり、野生品は知られていない。自然交配による雑種であろうという。
種子は生るが、実生の株の花には変異が多い。枝を、実生の苗か M.beccata(山荊子)に接木して、増やす。 |
日本には自生せず、ほとんど栽培しない。 |
誌 |
漢土で観賞されてきた海棠と言えば 本種である。しかしながら、日本には入ってこなかった。
「農業遺伝資源を別にすると,日本で栽培された記録は見いだされない.・・・近代以前に日本への導入があっても不思議ではない.栽培記録がない理由として,江戸時代以前には,ミカイドウやハナカイドウと区別されなかったことが考えられるが,それならば,近代の植物分類学の導入以降には正しく同定されていたはずなので,たとえ導入されていたとしても,その後失われたと思われる」(池谷祐幸「植木生産業者と植物園への調査によるバラ科希少樹種の生産・栽培の状況」2024)。
「和において真の海棠なし」という(『滑稽雑談』)ゆえん。
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その花は、南北朝時代から観賞され、美しい女性の姿にたとえられてきた。
すなわち、洛陽の北に金谷園を営んだ石崇(249-300)は、かつて満開の海棠を前にして「汝、若し能く香れば、当に金屋を以て汝を貯えん」といったという(『王禹偁詩話』。黄金で家を作って美女を貯えるとは、『漢武故事』に見える故事から)。
唐には、玄宗(685-762,在位712-756)が二日酔いでしどけない楊貴妃の姿を見て、「海棠の睡り、未だ足らざるのみ」と庇ったのは有名な逸話(『太真外伝』)。
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